公演案内【公演記録】


2011年度 鳥取オペラ協会公演

オペラ 窓(ウィンドウズ)

2011年12月3日(土)18:30開演・4日(日)14:00開演
とりぎん文化会館小ホール
入場料3,000円
多くのご来場ありがとうございました。

オペラ「窓」台本 (PDF:408KB)
スタッフ・キャスト紹介(パンフレットより PDF:984KB)



動画

1つ目の窓の一場面(動画)

2つ目の窓の一場面(動画)

3つ目の窓の一場面(動画)


画像


アンケートコメント
★ 12月3日  オペラ「窓−ウインドウズ」アンケート集計(入場者数/282人)

本日の催しはいかがでしたか?
1、 とても満足
〇初演であったが、すばらしい演奏であった。
〇3部とも、異なった構成で、出演者の方々のレベルも高く最後まで楽しめました。
〇鑑賞していて、ワクワクしました。
〇今私達が直面しているテーマが取り上げられていてオペラと云うことばを普段着の形で見られると云う事がよかったです。
〇こういう世界もあっていいかなと思ったから。
〇楽団の皆様の演奏も良く見えて良かったです。
〇新鮮で現代的な複雑でしかも身近かな発想がある。
〇現代の社会にある世界をみごとにオペラで表現してあり、感動しました。曲も演出も良かったです。
2、 満足
〇独創的な話で良かった!1幕がよくわからなかった…。
〇すごい、圧倒された。
3、 普通
〇2ばんめのが嫌でした。

本日の催しの感想(良かった点・悪かった点など)、ご自由にお書きください
〇1番目の窓で動物がたくさんでてきたところが良かった。モーツァルトの曲がいろいろ歌われるところ。2番目はお母さんが気持ち悪かった。2番目の窓の娘さんが今日一番良かった。ありがとうございました。(女性/40代/東部)
〇第二部が安直な気がした。1、2で振られた女から物語が始まるのか?三部へとつなげるため?失恋した女(振られた)→笑いをとる的・コミカル的な部分。一人ぐらし→孤独等。(女性/30代/中部)
〇鶴崎千晴さんの「母」の歌は最高です。(女性/40代/東部)
〇すばらしい台本、すばらしい曲、すばらしい演出、すばらしい演奏!!(男性/40代/東部)
〇一部は現代社会のパソコン時代の人が「動物の惑星」にトリップさせるのは、今の人間の傲慢さを感じました。それと環境問題も考えさせられました。(男性/30代/東部)
〇面白かったです。オペラを鳥取で広めてほしいです。(女性/30代/東部)
〇初めてのオペラですばらしかった、又聞きたいです。(女性/70歳代以上/東部)
〇パンフレットのストーリーをあらかじめ読まなかったため、新鮮であったが、内容が分かり難かった。歌手、合唱、演奏も素晴らしかった。(男性/50代/東部)
〇全体的に笑の高さ等、素晴らしかった。歌唱、音楽もよく聞こえた。(男性/70歳代/東部)
〇いろいろなまどがあって、面白かったです。(女性/20歳未満/東部)
〇もう一度聴くと新たな発見、感動がありそうな予感がし、又、観たいと思いました。ありがとうございました。(女性/40代/東部)
〇うまく作品世界に入りこむことができなかったです。「窓を越える」という所作をもっとていねいにやってほしかったです。演奏と歌声がとてもすてきでした。ありがとうございました。(女性)
〇真近に音楽が聞けて、すごくおもしろかったです。迫力がありました。楽しかったです。(女性/40代/東部)


★ 12月4日  オペラ「窓−ウインドウズ」アンケート集計(入場者数/193人)

本日の催しはいかがでしたか?
1、 とても満足
〇前知識がなかったので、オペラといえば堅苦しいものを想像していましたが、とてもカジュアルで子どもでも楽しんで観られる内容のもので、目からウロコが落ちました。娘と2人思いきり笑いながら観させていただきました。
〇2日間見ましたが、両日ともちがった発見がありしんせんに楽しめました。
〇前回窓@Aを聴いた(見た)が、演出はさらに面白くなっており、楽しめるものになっている。
〇すばらしく感動しました。
〇オペラのイメージとはまた少し違ったおもしろさがあって、演出に工夫がされていると思いました。ショートで分かりやすく、会場一体というような感じが良かったです。
2、 満足
〇オペラは初めて鑑賞させていただいた。
〇今日の第3の佐々木まゆみさんすばらしかったです。吉田さんもとても良かった。ありがとうございました。
〇現代社会への問題提起と思いました。創造物の中の頂点にいる人間が、どのように創造物をあつかって来たのか?の反省材料です。人間の欲求のもとで万物を大切にして来たのか?の反省があります。自己中心な欲求が最後には己に、被害を及ぼすであろうことを示唆しています。すべては調和の世界が理想だと思いました。
3、 普通
4、 不満
〇演出の工夫、衣裳のバランス、ぎこちない、とれていない。3つの窓はスンナリみれた、異和感なくみれた。

本日の催しの感想(良かった点・悪かった点など)、ご自由にお書きください
○音楽はすばらしい。音楽に素人ではあるが、聴く・視るだけでも感じます。(男性/40代/東部)
○なかなかおもしろかったです。舞台設定も大変おもしろかったですよ。(女性/60代/東部)
○フラミンゴが良かった。さるも。夜の女王だ。PASSOとCOMは昨日の組み合わせの方が好きです。音楽はすご〜いと思う。とっても自然なかんじがしてびっくりです。小ホール近すぎるのでやっぱり見えすぎるからなんかね−と思いました。(女性/40代/東部)


  鳥取オペラ協会 《窓 ウィンドウズ》初演を拝見して

                                            岸 純信(オペラ研究家)


 2011年鳥取オペラ協会公演《窓(ウィンドウズ)》の初演(12月3日(土))を拝見し、ステージングの充実ぶりに多々思うところがあったので、以下、その旨を率直に記させて頂きたい。

 まず初めに、出演者全員の強い熱意を讃えたいと思う。開幕冒頭では、大浦智弘の指揮のもとでオーケストラの演奏が非常に流麗であったことに感嘆した。どの情景でもリズムを明快に打ち出しつつ、音楽の詩情(特に第2幕)も強く醸し出せていた。彼の優れた技量により、音楽の心地よく雄弁な流れを最後までじっくりと楽しめたと思う。また、音響効果(中川丘)がどの場面でもやり過ぎることなく、適量であった点にも感心した。
 次いで、中村敬一の演出を高く評価したい。特に、「三つの窓(3幕立て)」の個性それぞれが、必要最小限の装置と色合いのはっきりした衣裳に支えられて、初見の客層にも一目で理解できた点を賞賛しておきたい。ちなみに、ステージの高さをもう少し加減することが可能な劇場においては、客席と同じ高さに位置した合唱団(第1幕冒頭)の配置もより機能的に作用するように思う。将来の再演時には、新たなスペースのもとで、コーラスの新たな演技法&ポジショニングが楽しめるのではないかと想像する。
 それでは合唱とソリスト勢の演唱、及び幕ごとの内容についてコメントさせて頂きたい。〈一つ目の窓〉の前章に当たる混声合唱では、人数に比して声の響きがところどころ薄くなり(特にソプラノとテノール)、ハーモニーの乱れも聴きとれた。この点は率直に指摘させて頂こう。しかし、ここでの合唱団の役割は非常に重要なものであり、オペラ全体のテーマ「窓を開けよう」の歌詞が、複数回歌われることで、徐々に客席に浸透していった点は疑うべくもない。一見当たり前のことではあるが、言葉が演劇よりも聴き取りにくいオペラでは、この場の音作りのように、最重要なテーマは「繰り返しの効果」を狙うべきと思う。また、上記のコーラスへの注文についても、より一層の研鑽を望むべく綴ったものである点を理解して頂きたい。
 続いては〈一つ目の窓〉について。まずは、女(小椋美香子)の日本語の通りのよさと、高音域の巧妙な使い方(カデンツァも丁寧にこなしていた)を賞賛。演技面も非常に思い切りよく行われ、面差しの表情付けと所作の結びつきが鮮明であり、冒頭での彼女の表現力が、この幕の前半をしっかりと支えていた点に感銘を受けた。今後は、声音にもう少しの膨らみが出ればと思う。続いて、フラミンゴ(足森愛梨)の正確なコロラトゥーラ(夜の女王の名フレーズを原調でたびたびこなした点に驚嘆)と象(西岡千秋)のむらのない響きとゆったりとした表現法に魅せられた。  また、猿(井田裕子)の朗らかな演じ方、クジャク(銭亀睦美)の深い声音と緩やかな動きからくる独自のとぼけた味わい、そして、キツツキ(加藤耕一)の〈女心の唄〉を取り入れたフレージングでの明快な存在感など、いずれも各人の個性を感じ取ることが出来たと思う。ただし、これらの役柄がオペラのパロディを表現している点を客席により深く理解させるためにも、彼らのアンサンブルには、もう少しの演奏時間及びリフレイン等が必須と感じられた。
 それから、この幕で一番の難所を任された二人 − PASO(小倉知子)とCOM(山田康之)の健闘も讃えておきたい。全く違う歌詞を同時に歌うフレーズが続く中で、それぞれの主張を少しでも通そうと工夫を凝らした点が演技にも歌にも見て取れて、こちらも応援したくなるような熱演ぶりであった。ただし、折角の熱演ぶりにもかかわらず、ドラマの重要なポイントである各々の歌詞が、フレーズの同時進行により聴き取りにくかった点は否めない。評者のように事前にスコアを読んでから公演に臨む聴衆はほぼ皆無と思う。再演の際には、二人のパッセージを少しずつずらしたり、復唱の回数を増やすなど、部分的な改稿を検討すべきと思われた。
 なお、この幕の台本では、前半における独り暮らしの人間がインターネットの世界にしがみつくがゆえの孤独感の表出と、後半での「自然破壊への懸念」の主張が、ストレートに結びつくというよりも、L字型の展開を遂げているように思われた。そのため、客席では野生動物のキャラクターの出現を唐突に感じていたように思う。その唐突さを減らすためにも、その前後の展開において、歌詞で内容を十分に理解させるような曲作り&台本作りが必要ではないだろうか。

 続いて〈二つ目の窓〉について。まずは、女(尾前加寿子)と母(鶴崎千晴)の二人の声量が豊かで聴き応えあり、確かに母娘と思わせるだけの、同レヴェルの手ごたえを十分感じることができた。舞台のシンプルな作りもドラマの哀感を強めるものとなっていたと思う。この幕の強い訴えかけは、緩徐楽章的な位置付けを超えて、現代人が改めて考えるべきテーマであろう。ドラマの重みを客席にしかと伝える一場となっていた。

 第三幕の〈三つ目の窓〉では、鏡の魔を感じさせたドラマが秀逸。鏡の女(中橋芳惠)の響きが硬い点が若干気になったが、そのストレートな響きは逆に、この役柄の冷たく妖しい個性を考えたときに、決して外れているものでもなかったと思う。ただし、声楽の一般的な見地からは、今後、より柔らかくふくよかな発声法を目指すべく、一層の精進に期待したい。また、男(渡邊寛智)の豊かな声量、柔らかい発声法、印象的な上背、マイムのこなれた感じ、口跡のはっきりした感など、それぞれ巧く役柄とマッチしていたと思う。演出法もテンポの良いもので、舞台の進行具合が一目で見て取れた。

 最後に新倉健の作曲について。前作《ポラーノの広場》と同じく、オペラの諸要素 − ソロ、重唱、アンサンブル、合唱、メロドラムの活用などいずれも巧く繋げられていて、非常に聴きやすく、インパクトのある音運びになっていたと思う。ただ一点気になったのは、先述の通り、「ドラマ上、最重要の意味を持つフレーズが、往々にして一回歌われるだけで消えてしまい、それが聴き取れなかった場合は、ドラマの進行についてゆくのが難しくなる」点である。今回は何より、〈一つ目の窓〉にその感を強く抱いた。何度も記して申し訳ないが、リフレインの活用による理解度促進の面をいま一度検討してもらえればと思う。実際、休憩時間も含めても演奏時間が2時間をかなり切っている筈なので、第一幕を、例えば十分程度でも膨らませることは可能ではないか。改訂版での再演を熱望する。

鳥取オペラ協会